機能性ディスペプシア専門外来
胃部症状(胃痛、胃もたれ、消化不良、背部痛、胃がはるなどの症状)がある方は多いと思います。これらの症状が続いていてなかなか治らない場合、胃の病気あるいは胃外の病気を疑います。
胃の病気では、潰瘍やピロリ菌陽性胃炎、胃がんが代表です。また、胃外の病変ではすい臓がん、胆石、膵炎、腹部動脈瘤などが代表です。
内視鏡検査、超音波検査、CT検査、採血検査を行い原因を調べます。しかし、実際に病気が発見される方は全体の半分程度で、残りの半分の方では検査で異常が発見されません。
そのため、病気が発見されない方は、神経性胃炎やストレス性胃炎などと診断されてきました。
最近になって、検査で胃に異常がなく、胃部症状を訴える方では、胃の消化機能の低下、胃から食物を排泄する機能の低下、食事をして胃が拡張した時の胃壁の過敏性の増加(胃の壁が伸ばされると苦痛を感じる)胃粘膜の過敏性の増加などが指摘されるようになりました。そこで、検査で胃内外に異常がないにも関わらず胃部関連症状を訴える方を機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)と呼ぶようになってきました。
機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)は、実体があるわけではありません。便宜上名称をつけたにすぎません。
機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)の方では、胃部症状以外に排便異常(便秘や下痢)など腸の異常を訴える方がいます。
また、耳鳴り、めまい、頭痛、食欲がない、気持ちが悪い、うつ症状など胃腸とは直接関係のない部位の症状、体と心の症状を伴う方がいます。そのため、機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)とは、何なのか?原因や、どうすれば良くなるのかについて、現代医療ではよく分かっていません。
診察
胃部症状のある方は、診察のうえ内視鏡検査と超音波検査をお受けください。胃外に病気がなく、胃に胃炎がない(ピロリ菌の感染もない)、潰瘍がない、胃がんがないことを確認する必要があります。
診断
見える異常、観察できる異常、あるいは測定できる異常がないにも関わらず、胃部症状がある場合は、機能性ディスペプシアと診断できます。
発症のしくみ
機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)には発症のしくみ(心と体のしくみ)があります。
「脳と自律神経のしくみ」がうまく動かなくなると発症します。
- 「心と体は分離できないひとつ」です。
- 「心と体は分離できないひとつ」で動くことで生命現象を営みます。
- 「心と体がひとつで動くしくみ」があります。
- 「心と体がひとつで動くしくみ」には、命令通り動く系統(例:手足を動かす)と命令通り動かせない系統(例:心臓)があります。
- 機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)は、命令通りに動かせない系統のしくみに属します。
- 「しくみ」がうまく動いている時は調子がいい、しくみがうまく動かないと調子が悪くなります。しくみが止まると「死」です。
- 機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)は、「しくみ」がうまく動くようになれば、症状は改善・消失します。
- 「心と体がひとつで動くしくみ」で命令通りに動かせない系統は、「脳と自律神経のしくみ」で制御されています。
- 「脳と自律神経のしくみ」は、普段は自動運転(オートパイロット)で動いています。
- 条件がいい時は、自動運転で、しくみはうまく動きます。
- 条件が悪い時は、自動運転の制御が乱れてきて、しくみはうまく動かなくなります。
- 自動運転に任せていると、制御がうまくいっている時は、調子がいいですが、制御がうまくいかないと調子が悪くなります。自動運転で制御が困難になり暴走すると、症状が固定化して増悪していきます。
これらが、発症のしくみです。
条件が悪いと、自動運転は制御が乱れてきます。乱れる原因は3つあります。
1つ目は、「緊張」です。緊張すると、脳と自律神経のしくみの自動運転は、制御が乱れます。
2つ目は、「情報」の過剰による「脳細胞の疲労」です。
システムエンジニアを代表とする、パソコンを使った仕事をする方は、光刺激や電磁波の影響、扱う情報量が過剰で、脳細胞が極度に疲労します。あるいは、考え・思考にはまり、考え・思考をぐるぐると繰り返す方は、脳細胞が極度に疲労します。脳細胞が疲労すると、脳と自律神経のしくみの自動運転は、制御が乱れます。3つ目は、「感情」です。対人関係や出来事・現象など、日々の脳の認識活動によって、色々な感情が蓄積します。そして、感情の蓄積が緊張の蓄積を産みます。感情が蓄積したり高ぶると、脳と自律神経のしくみの自動運転は、制御が乱れます。
まとめると、「情報の過剰(脳細胞の疲労)」・「感情」・「緊張」によって、「脳と自律神経のしくみ」の自動運転は、制御が乱れながら、動いています。日常生活の中で、だんだんと制御が困難になってくると、機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)と呼ぶ症状が現れてきます。
治療の考え方
通常の薬物療法(胃酸の分泌を抑制する薬剤)は無効です。
あるいは、アコファイドなどの消化管機能改善薬は、少数例で一時的にやや有効ですが、しばらくすると悪化します。機能性ディスペプシアは、症状が改善したり悪化したりを繰り返すのが特徴です。
そして、だんだんと、症状が多彩になり、深刻化し、ついには症状が悪化したまま改善しなくなります。ですから、機能性ディスペプシアと分かったら早急に「脳と自律神経のしくみ」が制御を取り戻して、うまく動くようにする「リセット治療」を開始する必要があります。
「脳と自律神経のしくみ」が、うまく動くようになると、機能性ディスペプシアと呼ぶ症状は改善して消えていきます。「脳と自律神経のしくみ」がうまく動くようにするためには、3つの方法があります。
1つ目はしくみがうまく動くように補助する薬剤(漢方)。
2つ目はしくみが暴走しないようにガードレールをする(コップを上からふたをするイメージでもいいですね)安定剤などの薬剤。
3つ目はしくみが自動運転ではうまく制御できない、うまく動かない時に、「マニュアル運転」をする「技術」を身につけることです。
「運転の技術」を身につければ、「脳と自律神経のしくみ」を常に運転する感覚で生活できるようになります。すると、自動運転とマニュアル運転を組み合わせて、しくみを自分でうまく動かせるようになります。
補助する薬剤(漢方)、あるいは、ガードレールの薬剤(安定剤)などを服薬しながら、「しくみの運転」の練習に通院することで、症状は改善します。改善後は、安定剤や漢方薬の服用を中止することができ、自立できるようになります。「技術」を使って、「しくみを運転」する感覚が養われるので、通院を終了(卒業)することが可能となります。これを「しくみの運転」=「不定愁訴外来」と呼んでいます。
当クリニックの治療実績
2006年4月から2021年3月末までに、1792名の機能性ディスペプシアの患者を診療しています(2020年度は64例)
1792例中1512例(約84.4%)は、「しくみの運転」=「不定愁訴外来」で症状が消失しました。また、230例(12.9%)は症状が改善しました。
つまり、発症のしくみに則って治療を行うことで、機能性ディスペプシアの方1792例中1742例は(約97.2%)で症状の改善・消失が達成されました。しくみの運転(リセット治療)の「技術」の練習を習慣化して、制御力を充分に獲得した方は、全員症状が改善して、通院が終了(卒業)しました。中途で通院をやめてしまったり、「しくみの運転」を習慣化しないと、制御力が身につかなかったり、対応できる幅が広がりません。症状が再燃したり、症状が良くなったり、悪くなったりを繰り返して、増悪していきます。「脳と自律神経のしくみ」をマニュアル運転する「技術」「練習」「習慣化」を身につけて、「しくみを運転する感覚」を養うまで通院を継続することがポイントです。
機能性ディスペプシア専門外来では、発症のしくみに基づいて漢方薬や安定剤の投与と「しくみの運転」=「不定愁訴外来」を取り入れ、機能性ディスペプシアを治せる治療を行っています。
診療期間
症状の改善・変化が現れる期間は、個人差があります。服薬としくみの運転(リセット治療)の「技術」の練習を開始してから数日で改善・変化する方、服薬としくみの運転(リセット治療)の「技術」の練習を開始してから1ヶ月以上経過してから改善する方などまちまちです。罹病期間(症状が出現してから現在までの期間)が長い方、年齢が高い方、女性より男性、思い込み・決めつけの強い方、頭であれこれ考えてしまい考え(思考)の止まらない方、心の症状が強く顕現化して、精神科・心療内科領域の薬を長期間服用している方、は症状の改善・変化が現れる期間が長くなります。
また、しくみの運転(リセット治療)の「技術」の練習中は、症状が改善したり、再び症状が悪化したりします。
しくみの制御力をしっかり身につけ、日常の色々な場面で意識して小まめにしくみの運転(リセット治療)をすることができるようになると、体調が安定化して、症状が改善・消失します。制御力がしっかり身につき習慣化して、しくみの運転感覚が養われるまでを完遂して、症状が消失し治療が終了(卒業)するまで、3ヶ月から4年程度の診療期間が必要となります。
ご予約・お問い合わせ
機能性ディスペプシア専門外来は完全予約制でのご案内となっております。診察をご希望の場合は、まずはお電話にてご予約をお願いいたします。また、お問い合わせにつきましてもお電話にて承っております。
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電話受付時間
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