過敏性腸症候群専門外来

過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:通称 IBS)は、見える異常、観察できる異常、測定できる異常がないにも関わらず、腹部症状がある状態に対しての総称です。小腸や大腸の運動あるいは分泌機能の異常と推測されています。検査を行っても炎症や潰瘍など目に見える異常が認められないにも関わらず、下痢や便秘、ガス過多による下腹部の張りなどの症状が起こります。

症状

腹部膨満、腹痛、下痢、便秘、ガスが多い、ガスが気になる、おなかがごろごろする、緊張するとトイレに行きたくなるなど、腹部関連の症状は多彩です。また、他の身体症状や心の不調を伴うことがあります。
対人関係の問題を抱えていることが多いのが特徴です。

発症のしくみ

過敏性腸症候群には発症のしくみ(心と体のしくみ)があります。
「脳と自律神経のしくみ」がうまく動かなくなると発症します。

  • 「心と体は分離できないひとつ」です。
  • 「心と体は分離できないひとつ」で動くことで生命現象を営みます。
  • 「心と体がひとつで動くしくみ」があります。
  • 「心と体がひとつで動くしくみ」には、命令通り動く系統(例:手足を動かす)と命令通り動かせない系統(例:心臓)があります。
  • 過敏性腸症候群は、命令通りに動かせない系統のしくみがうまく動かなくなると発症します。
  • 「しくみ」がうまく動いている時は調子がいい、しくみがうまく動かないと調子が悪くなります。
  • 過敏性腸症候群は、「しくみ」がうまく動くようになれば、症状は改善・消失します。
  • 「心と体がひとつで動くしくみ」で命令通りに動かせない系統は、「脳と自律神経のしくみ」で制御されています。
  • 「脳と自律神経のしくみ」は、普段は自動運転(オートパイロット)で動いています。
  • 条件がいい時は自動運転で、しくみはうまく動きます。
  • 条件が悪い時は、自動運転の制御が乱れてきて、しくみはうまく動かなくなります。
  • 自動運転に任せていると、制御がうまくいっている時は調子がいいですが、制御がうまくいかないと調子が悪くなります。自動運転で制御が困難になり暴走すると、症状が固定化して増悪していきます。

これらが、発症のしくみです。

なぜ、「脳と自律神経のしくみ」の自動運転は、制御が乱れるのですか

1つ目は、「緊張」です。緊張すると、脳と自律神経のしくみの自動運転は、制御が乱れます。
2つ目は、「情報」の過剰による「脳細胞の疲労」です。
システムエンジニアを代表とする、パソコンを使った仕事をする方は、光刺激や電磁波の影響、扱う情報量が過剰で、脳細胞が極度に疲労します。あるいは、考え・思考にはまり、考え・思考をぐるぐると繰り返す方は、脳細胞が極度に疲労します。脳細胞が疲労すると、脳と自律神経のしくみの自動運転は、制御が乱れます。3つ目は、「感情」です。対人関係や出来事・現象など、日々の脳の認識活動によって、色々な感情が蓄積します。そして、感情の蓄積が緊張の蓄積を産みます。感情が蓄積したり、高ぶると、脳と自律神経のしくみの自動運転は、制御が乱れます。
まとめると、「情報の過剰(脳細胞の疲労)」「感情」「緊張」によって、「脳と自律神経のしくみ」の自動運転は、制御が乱れながら、動いています。日常生活の中で、特に「対人関係の問題」を抱えていると、だんだんと制御が困難になり、過敏性腸症候群と呼ぶ症状が現れてきます。

診断

急性あるいは慢性の感染症がないことの確認、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)ではないことの確認、鎮痛薬を常用していないか(小腸潰瘍などの粘膜傷害)の確認などを行います。
状況に応じて便培養検査や大腸内視鏡検査、カプセル内視鏡検査などを行ないます。器質的原因がないにも関わらず、持続して症状があれば、「過敏性腸症候群」の診断となります。

治療の考え方

最近は、腹痛・下痢・便秘に対して有効性のある薬剤が出てきました。そのため、薬物療法で過敏性腸症候群の症状にある程度はコントロールできるようになりました。
しかし、3つの欠点があります。1つ目は、あくまで症状を抑制するのみで、根治療法ではないこと。2つ目は、はじめのうちは、服薬で効果があっても、だんだんと症状が悪化してくる例が多いこと。3つ目は、薬物療法で症状が抑えられなくなると、精神安定剤の投与が必要になってくる(投与される)ことです。
過敏性腸症候群は、症状が改善したり、悪化したりを繰り返すのが特徴です。そして、だんだんと症状が多彩になり深刻化し、症状がコントロールできなくなってきます。
過敏性腸症候群は、「対人関係の病」「心の病」「自律神経の制御が効かない病」そして、「身体の病」なので、過敏性腸症候群と分かったら早急に「脳と自律神経のしくみ」が制御を取り戻して、うまく動くようにする「不定愁訴外来」を開始する必要があります。

「脳と自律神経のしくみ」がうまく動くようにするためには、3つの方法があります。
1つ目はしくみがうまく動くように補助する薬剤(漢方)。
2つ目はしくみが暴走しないようにガードレールをする(コップを上からふたをするイメージでもいいですね)安定剤などの薬剤。
3つ目はしくみが自動運転ではうまく制御できない、うまく動かない時に、「マニュアル運転」をする「技術」を身につけることです。

「運転の技術」を身につければ、「脳と自律神経のしくみ」を常に運転する感覚で生活できるようになります。
すると、自動運転とマニュアル運転を組み合わせて、しくみを自分でうまく動かせるようになります。

当クリニックの治療実績

2006年4月から2021年3月までに、855名の過敏性腸症候群の患者を診療しています(2020年度は42名)。
しくみの運転=リセット治療を行いました。
855例中、症状消失は555例(64.9%)、症状改善は214例(25.0%)でした。症状改善率は855例中769例(89.9%)でした。1〜2回通院して治療を中断される方が86例(10.1%)でした。過敏性腸症候群は対人関係に問題を抱える方が多いため、対人関係の問題を解決したいという強い気持ちがない方(症状を良くしたいという気持ちだけの方)は、症状がすぐ良くならないと通院をやめてしまう傾向があります。通院を継続して、しくみの運転=リセット治療を完遂すれば、症状が改善・消失して、通院を終了(卒業)することが可能です。

診療期間

「脳と自律神経のしくみ」を運転する「技術」を習得していきます。
「技術」、「練習・習慣化」で「しくみを運転しながら生活する感覚」を養っていきます。症状の改善・変化が現れる期間は、個人差があります。練習開始から数日で改善・変化する方、練習を開始してから1ヶ月以上経過して、少しずつ改善する方などまちまちです。
罹病期間(症状が出現してから現在までの期間)が長い方、年齢が高い方、思い込み・決めつけの強い方、頭であれこれ考えてしまい考え(思考)の止まらない方、心の症状が強く顕現化して、精神科・心療内科領域の薬を長期間服用している方、対人関係の問題になかなか向き合えない方は症状の改善・変化が現れる期間が長くなります。

また、しくみの運転を練習中は、いったん症状が改善しても状況・環境の変化で再び症状が出現します。
症状が良くなったり、悪くなったりと波を体験しながら、しくみの運転の練習・習慣化を継続すると、制御力がつきます。練習・習慣・経験・対応力・制御力をつけることがしくみの運転=リセット治療の目的です。
リセット治療を完遂すると、症状は消失して自立(卒業)することが可能です。「脳と自律神経のしくみ」を運転しながら生活する感覚が身につき、症状が消失し、リセット治療が終了(卒業)するまで、3ヶ月から48ヶ月程度の診療期間が必要となります。

「対人関係の問題」に向き合う決断・勇気を

過敏性腸症候群は、「対人関係の病」「心の病」の概念が色濃く出ます。
病を良くするためには、自分自身が、「対人関係の問題」に向き合う決断・勇気を持つことが大切です。
家族に連れられて受動的に来院する患者さんの場合は、「対人関係の問題」「心の問題」に向き合う決断・勇気を持てない状態のため、すぐに通院されなくなります。
決断・勇気を持って、しくみの運転=リセット治療に取り組めば、しくみは運転できるようになり症状は改善するので、勇気を持って、一緒にしくみの運転の練習をしていきましょう。

また、10代の過敏性腸症候群のお子さんの場合は、実は、お母さんの影響が強く出ていることが多い傾向にあります。
お母さんのしくみが、うまく動いていないことが、お子さんのしくみにも影響を与えているのです。そのため、10代の過敏性腸症候群のお子さんの場合は、お母さんも一緒にしくみの運転に取り組んでいただいております。

ご予約・お問い合わせ

過敏性腸症候群専門外来は完全予約制でのご案内となっております。診察をご希望の場合は、まずはお電話にてご予約をお願いいたします。また、お問い合わせにつきましてもお電話にて承っております。
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